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正社員型無期雇用派遣と自社勤務型正社員の違いは「雇用主と働く場所が同じかどうか」です。雇用主・給与の決まり方・評価・キャリア・仕事がなくなったときの扱いを7つの軸で比較し、事務とエンジニアの具体例で3年後にどう差がつくか、求人票と面接での見分け方まで解説します。
「正社員の求人に応募したはずなのに、内定先は派遣会社だった」「無期雇用派遣は正社員と同じと言われたけれど、本当に同じなの?」。20代の転職相談で、無期雇用派遣と正社員の違いが分からないまま応募している人は少なくありません。求人票ではどちらも「正社員」と書かれることがあるため、違いが見えにくいのです。
結論からいうと、正社員型無期雇用派遣と自社勤務型正社員の違いは、雇用主と働く場所が同じかどうか にあります。無期雇用派遣は派遣会社に雇われて派遣先で働き、自社勤務型正社員は雇われた会社の中で働きます。この一点から、給与の決まり方、評価、キャリアの積み上がり方まで変わります。
この記事では、2つの働き方を7つの軸で比較したうえで、事務職とエンジニア職の具体例で「同じ職場にいても何が違うのか」「3年後にどう差がつくのか」を描きます。自分に合うほうを選ぶ判断基準と、求人票や面接での見分け方も紹介します。
2つの働き方は、どちらも期間の定めのない雇用契約を結ぶ点では同じです。違うのは、雇用契約を結ぶ会社と、毎日働く会社が別かどうかです。まず、それぞれの定義と、混同されやすい登録型派遣との違いを整理します。

正社員型無期雇用派遣とは、派遣会社と期間の定めのない雇用契約を結び、派遣会社が決めた派遣先企業で働く形態です。「常用型派遣」「正社員型派遣」とも呼ばれます。給与の支払い、賞与、昇給、評価はすべて派遣会社の制度で決まり、日々の業務の指示は派遣先から受けます。
派遣先との契約が終わっても派遣会社との雇用は続くため、次の配属先が決まるまでの間も雇用は切れません。厚生労働省の「労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)」によると、無期雇用派遣労働者は874,747人で前年比7.0%増と、派遣全体(約201万人)の中で増え続けている働き方です。
自社勤務型正社員とは、勤務先の会社に直接雇用され、その会社のオフィスや事業所で働く、一般にイメージされる正社員のことです。正社員に法律上の定義はありませんが、一般には「雇用期間の定めがない」「フルタイムで働く」「直接雇用である」の3つを満たす人を指します。
無期雇用派遣は「直接雇用」の相手が派遣会社であり、派遣先から見れば直接雇用ではありません。この記事では、派遣会社の正社員と区別するために、勤務先に直接雇用される正社員を「自社勤務型正社員」と呼びます。
派遣には、派遣先が決まるたびに派遣会社と有期の雇用契約を結ぶ「登録型派遣(有期雇用派遣)」もあります。登録型派遣は派遣先での仕事が終わると雇用契約も終わり、次の仕事までの間は給与が出ません。無期雇用派遣は仕事と仕事の間も雇用が続く点で、登録型派遣より安定しています。
| 項目 | 登録型派遣 | 正社員型無期雇用派遣 | 自社勤務型正社員 |
|---|---|---|---|
| 雇用主 | 派遣会社 | 派遣会社 | 勤務先の会社 |
| 雇用期間 | 派遣先ごとの有期契約 | 期間の定めなし | 期間の定めなし |
| 働く場所 | 派遣先 | 派遣先(派遣会社が決める) | 自社(配属は会社が決める) |
| 給与形態 | 時給が中心 | 月給が中心 | 月給が中心 |
| 仕事の切れ目 | 雇用も給与も途切れる | 雇用は続き、待機中も手当が出る | 部署異動はあっても雇用は続く |
| 3年ルール | 同じ部署で最長3年 | 対象外 | 該当なし |
同じ「無期雇用」でも、給与・評価・キャリア・安定性の仕組みは別物です。雇用主と働く場所が別であることが、それぞれの軸でどう効いてくるかを比較表で確認してください。
| 比較軸 | 正社員型無期雇用派遣 | 自社勤務型正社員 |
|---|---|---|
| 雇用主 | 派遣会社 | 勤務先の会社 |
| 業務の指示 | 派遣先の社員から受ける | 自社の上司から受ける |
| 給与の決まり方 | 派遣会社の給与テーブル。派遣先の社員とは別の基準 | 勤務先の給与テーブル |
| 賞与・昇給 | 派遣会社の制度次第。上がり幅は緩やかな傾向 | 勤務先の業績と評価で決まる |
| 評価する人 | 派遣会社の担当者(派遣先の声を参考にする) | 日々仕事を見ている上司 |
| 昇進・役職 | 派遣先では役職に就けない | 主任・リーダー・管理職への道がある |
| 仕事がなくなったとき | 別の派遣先へ配属。決まるまでは待機 | 社内で異動や配置転換 |
無期雇用派遣の給与は派遣会社の制度で決まります。隣の席の派遣先社員と同じ仕事をしていても、給与テーブルも賞与の計算も別です。2020年の派遣法改正で「同一労働同一賃金」が派遣にも適用されましたが、多くの派遣会社は「労使協定方式」という、派遣会社と労働者代表の協定で賃金を決める方式を採っています。派遣先の社員と自動的に同じ待遇になるわけではありません。
評価の仕組みも違います。無期雇用派遣では、派遣会社の営業担当が派遣先の評判を聞き取り、それをもとに派遣会社が評価します。毎日仕事ぶりを見ている人と、昇給を決める人が別なのです。自社勤務型正社員では、上司が直接評価し、その結果が昇給や昇進に反映されます。
自社勤務型正社員は、同じ会社で経験を積むほど任される範囲が広がり、主任やリーダーといった役職に就く道があります。無期雇用派遣では派遣先で役職に就くことはなく、派遣先が変われば人間関係も業務知識もいったんリセットされます。その分、複数の会社を経験できる面はあります。
派遣先の都合で契約が終わっても、無期雇用派遣は雇用が続きます。派遣会社の都合で仕事を提供できない期間は、労働基準法第26条にもとづき、平均賃金の6割以上の休業手当が支払われます。ただし手当は通常の給与より下がり、次の配属先を自分で選べるとは限りません。
また、登録型派遣には「同じ部署で働けるのは最長3年」という期間制限(3年ルール)がありますが、無期雇用派遣は対象外です。同じ派遣先で3年を超えて働き続けることができます。
事務職は、無期雇用派遣の募集が多い職種の代表格です。未経験から事務職に就けることを売りにした派遣会社の採用枠が多く、20代の相談でも「事務の正社員になれると聞いて応募した」というケースをよく聞きます。ここでは、同じ経理アシスタントとして働くAさん(無期雇用派遣)とBさん(自社勤務型正社員)を例に比べます。
Aさんは派遣会社に入社し、数日の研修を受けたあと、メーカーの経理部に配属されました。仕事は請求書の処理、伝票入力、経費精算のチェックです。指示は派遣先の経理課長から受けますが、有給休暇の申請や給与の相談は派遣会社の担当者に連絡します。
2年目、派遣先が経理システムを刷新し、派遣社員の受け入れを縮小しました。Aさんは契約終了となり、1か月ほど待機したのち、別の会社の総務部に配属されます。経理の知識は活きますが、社内ルールも人間関係もゼロからです。3年目のAさんは2社での事務経験を持つ一方、月給は入社時からほとんど変わっていません。
Bさんは同じメーカーに正社員として入社し、同じ経理部で請求書処理から始めました。1年目はAさんとほぼ同じ仕事です。違いが出るのは2年目以降で、月次決算の補助、監査対応の資料作成、新しい経理システムの導入プロジェクトと、任される範囲が広がっていきます。
3年目のBさんは、経理課長の評価をもとに等級が上がり、後輩の指導も担当しています。年収は入社時から上がり、賞与も会社の業績に連動して支給されます。一社で業務の深さを積み上げた分、「経理担当者」として転職市場でも評価されやすい状態です。
事務から別の職種へ広げたい場合の考え方は、事務から営業への転職で活かせるスキルと志望動機の例文で詳しく解説しています。
エンジニアの場合、無期雇用派遣は「客先常駐」の一形態として語られます。似た働き方にSES(システムエンジニアリングサービス。準委任契約で技術者を顧客先に常駐させる形態)があり、3つの違いが分からないまま応募する人が多い領域です。ここでは、同じWebシステムの開発現場で働くCさん(無期雇用派遣)とDさん(自社開発の正社員)を比べます。
Cさんは未経験からエンジニアになるため、研修付きの派遣会社に入社しました。3か月の研修のあと、大手企業の社内システム部門に配属され、テスト工程と簡単な改修を担当します。指示は派遣先のリーダーから受け、派遣会社の担当者とは月1回の面談で状況を共有します。
2年目、派遣先のプロジェクトが終了し、次は別の業界の運用保守案件に移りました。使う言語も環境も変わり、どの技術を深めるかを自分で決めにくいのが悩みです。3年目のCさんは2つの現場を経験していますが、設計や要件定義の工程は任されておらず、年収の上がり幅は小さいままです。
Dさんは自社でWebサービスを開発している会社に正社員として入社しました。1年目はCさんと同じくテストや小さな改修からです。違いは、自社のプロダクトなので、ユーザーの反応や売上まで見ながら開発できることにあります。
2年目以降は機能の設計から任され、3年目には小さなチームのリーダーとして要件定義にも関わります。評価は一緒に働く開発マネジャーが行い、技術の深まりが昇給に直結します。一方で、自社のプロダクトに使う技術に縛られるため、幅広い現場を見る経験はCさんより少なくなります。
SESは「準委任契約」という契約で、顧客先に常駐して働きます。派遣との最大の違いは、業務の指示を出す権限(指揮命令権)がSES企業側にあることです。派遣なら派遣先の社員が直接指示できますが、SESで顧客が常駐エンジニアに直接指示すると「偽装請負」という違法状態になります。
| 項目 | 無期雇用派遣エンジニア | SESエンジニア | 自社開発の正社員 |
|---|---|---|---|
| 契約の種類 | 労働者派遣契約 | 準委任契約 | 直接の雇用契約のみ |
| 業務の指示 | 派遣先の社員 | SES企業(自社)の責任者 | 自社の上司 |
| 働く場所 | 派遣先 | 顧客先(常駐) | 自社 |
| 案件・技術の選び方 | 派遣会社が決める | SES企業が決める | 自社のプロダクト次第 |
| 評価する人 | 派遣会社の担当者 | SES企業の上司(現場を直接見ていない場合も) | 一緒に働く上司 |
無期雇用派遣は「やめとけ」と言われることもありますが、一方的に悪い働き方ではありません。未経験からの入り口としての強さと、長くいるほど効いてくる弱さを分けて理解してください。
自社勤務型正社員のメリットは、評価が昇給と昇進に直結し、一社で業務の深さを積み上げられることです。デメリットは、未経験での採用枠が限られること、残業や責任の重さが会社によって大きく違うことです。「正社員なら安心」ではなく、どの会社の正社員かで中身は変わります。会社の規模による違いは、大手とベンチャーの働き方・給与・評価の比較で解説しています。
判断の軸は「今の自分が何を優先したいか」です。次の項目に当てはまる数が多いほうが、現時点で合う働き方です。
無期雇用派遣の求人は「正社員」「正社員(無期雇用派遣)」「正社員型派遣」など、表記がまちまちです。雇用形態の欄と勤務地の欄をセットで読むことが、見分ける近道です。
キャリアアドバイザーが無期雇用派遣の求人を紹介するとき、面接前に確認している項目があります。応募者自身が面接で聞いても問題ない質問なので、そのまま使ってください。
答えが曖昧な会社、「人による」で終わる会社は、入社後に配属先ガチャになりやすい傾向があります。転職エージェントの活用方法は、転職エージェントの使い方と登録から内定までの流れにまとめています。
無期雇用派遣の経験は、直接雇用の選考で不利になるわけではありません。採用側が見るのは「どの現場で何を担当し、何ができるようになったか」です。職務経歴書には派遣会社名だけでなく、派遣先の業種・部署・担当業務・使用したツールを具体的に書いてください。転職理由は「評価と給与が連動する環境で、業務の幅を広げたい」のように、前向きな言い換えにすると伝わります。
A. 派遣会社の正社員であることは事実なので、履歴書に「正社員(無期雇用派遣)」と書くのは問題ありません。ただし、派遣先の正社員ではない点を面接で聞かれたら正直に答えてください。雇用形態を曖昧にすると、入社後の信頼に関わります。
A. 派遣会社の制度によります。賞与を年2回支給する会社もあれば、賞与なしで月給に上乗せしている会社、退職金制度がない会社もあります。求人票の「待遇」欄と、面接での確認で把握してください。
A. 数日で次の配属が決まることもあれば、数週間から数か月に及ぶこともあり、本人のスキルや希望条件、派遣会社が持つ案件の量で変わります。待機中は休業手当(平均賃金の6割以上)となり、通常の給与より下がります。面接で「直近1年の平均待機日数」を聞いておくと目安になります。
A. 可能性はありますが、派遣先に直接雇用する義務はありません。登用実績の件数を派遣会社に確認し、実績が少ないなら、派遣で積んだ経験を職務経歴書にまとめて直接雇用の求人へ応募するほうが確実です。
A. 未経験職種への入り口として1〜2年使うなら、遅れにはなりません。差が開くのは2年目以降で、任される工程や昇給幅の違いが年々積み重なります。年収面の考え方は、20代の転職で年収が下がるケースと取り戻す方法も参考にしてください。
正社員型無期雇用派遣と自社勤務型正社員の違いは、雇用主と働く場所が別かどうかにあります。無期雇用派遣は未経験からの入り口が広く、仕事の切れ目でも雇用が続く一方、給与や評価は派遣会社の制度で決まり、派遣先で役職に就くことはできません。自社勤務型正社員は、評価が昇給と昇進に直結し、一社で業務の深さを積み上げられます。
事務でもエンジニアでも、1年目の仕事はほぼ同じです。差がつくのは2年目以降、任される業務の深さと昇給の幅です。今の自分が「入り口の広さ」と「積み上げ」のどちらを優先するかを決め、求人票の雇用形態と勤務地の欄を確かめてから応募してください。迷ったら、求人票に書かれていない配属先や昇給の実態を知るアドバイザーに相談するのが近道です。
執筆・監修 岩田珠優(CA/RA担当)
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